Projects (関連事業)

Afforestation Projects(緑化事業)

JSPS-JICA Dispatch Researchers Program (科学技術研究者派遣事業)

2009年タジキスタン政府より、地球規模の環境保全研究について協力要請があり、同年9月タジキスタンの自然環境について事前調査を実施した。
 事前調査をもとに実施計画を立案。2010年1月JSPS(日本学術振興会)科学技術研究者派遣事業制度に採択。同年3月JICA(国際協力機構)の短期専門家として当該国に派遣された。「電気柵利用による自然環境管理手法」を提案。21箇所のパイロットサイトで事業を展開。技術セミナー等実施し、2012年4月に終了。
 1)ソ連崩壊後、森林公社および森林研究所は困窮し、諸活動は停滞。2)自然の回復力を超える過度な土地利用による自然の荒廃、3)不法伐採、過剰放牧のため生態系資源の荒廃・低レベル化、4)植林と併行した民生安定のための必要な施業(苗木作り、薬草・養蜂、木工産業、小型水力発電、移動式製材所等)が自然環境保全に優先、などをまとめ、JSPS/JICAに報告。

 
 

Current Program (現行プログラム)

平成26年7月から平成29年6月まで、「緑の募金公募事業」による公募事業として3年連続して採択された。事業名は「タジキスタン国における森林および草地の生態系保全のための植林」
 事前調査(上述のプログラム)をもとに実施計画を立案。「柵(電気柵も含む)の利用による自然環境保全管理手法」を提案。21箇所のパイロットサイトから、タジキスタンの地政学的に代表的な特徴を併せ持つ3箇所(クマルク、ログ、ドウバ地区)に事業区を設け、住民の生活安定と環境保全事業両立させる事業を展開した。
 一般的な造林樹種(日本では、スギやヒノキをさすが)を植栽するとその収穫物である柱や板を収穫する(収益)までに長期の期間を要する。植栽後数年で収穫が可能な果樹園の創設を優先する。樹種はアプリコット、ブドウ、リンゴ、チェリー等での果樹である。その他にポプラ、マツ等も植栽。合計3800本あまり植栽した。リンゴは昨年30kgの収穫があった。家畜による食害を防ぐため、電気柵を設置したが、村人はまだその機能を十分に理解していない。時間をかけた技術移転が課題である。将来の持続可能な植林活動を可能にするためには、苗木の自主生産が必須だ。2017年4月に在タジキスタン日本大使やJICA幹部、地元住民を植樹祭に招待した。接ぎ木や剪定方法、牧草の種子の集め方等の技術研修を実施した。

 
 

Japanese Green Found Afforestation Program (緑の募金支援事業 第二期:2017〜)

事業名「家庭菜園を利用した持続可能な苗木生産の創出」

過剰な放牧により荒廃した生態系を保護するため、柵を設けて一時的に家畜の放牧を制限し、荒廃した60haの自然環境を修復した。
 植林よりも短期間で収穫物が得やすい果樹園の造成を優先した。実施には、支援金のなかから毎年50%以上の費用を苗木購入費やその輸送費として計上した。事業区毎に苗畑(苗木を育苗するところ)を造成し、苗木が自主生産できるので苗木の輸送費も大幅に軽減することができる。また春の植栽適期に、雪崩の危険のある3000mの高さのある峠を超える危険も回避できる。新しく得られた苗木は植林事業に供されるばかりでなく、地域の小学校等に無料で配布し学校林での環境教育に役立てられる。
 当面の苗木の生産量は3年後に年間3000本程度とし、家庭苗畑の規模は個人の土地所有形態により一定でないが、苗畑1箇所100m2程度とする。初年度はプロジェクトサイトを3箇所程度とし、苗畑はサイトあたり3箇所程度を見込む。

 
 

Aeon Environmental Found (イオン環境財団基金 2017〜)

事業名「中央アジア・タジキスタン国自然環境保全のための植林」

 ソビエト連邦崩壊後の中央アジア諸国を対象に、急速な自由主義経済の導入によって引き起こされた森林や草地等の天然資源の劣化を修復し、地域住民が今後も安定した生活が維持できるような自然環境作りに貢献する。
 数カ所のモデル事業区を設定する。これらの地区では過度の放牧により、森林や草地の生態系が荒廃に瀕しており、生態系の持続可能な保全システムの構築が必要である。
 具体的には、放牧された家畜による樹木/果樹の食害防止をするため、一時期間土地の利用を制限する柵が必要だ。柵の内側には野生種のバラを植栽する。バラは成長して数年後には家畜の侵入を防ぐ天然の柵となる。これを数年毎に新たな荒廃地に展開し、自然環境の再生を計る。ロミ地区、エッサンボイ地区、ダンガラ地区等が新規事業区である。

 
 

Pilot Sites at Kumarg, Ayni,Tajikistan (クマルク事業区、アイニー、タジキスタン)

Kumarg地区は首都Dushanbeから130kmほど離れた山間の小さな部落。地域住民の熱意は高い。村長のTemur氏を中心にまとまっている。
 パイロットは2箇所、上部は針葉樹の天然更新(植栽せず、もっぱら種子の落下・活着を期待して地表面の攪乱など最小限の人為によって林を仕立てる方法)による保続を期待。数年後上部斜面からの雪崩でサイトは破損。村からも遠隔地だったので、住民の要望を受け入れ現在は放置している。
 下部は村人の耕作地に近く監視の目が届く条件にあるので、果樹(アプリコット、リンゴ、チェリー)を植栽。樹木の生長はすこぶる良し。2014年の調査では家畜による食害はまったく見られない。全木活着(100%根付く)チェリーはすでに実りを迎えた。リンゴの背丈も十分。2018年谷の上部で中国の金鉱山会社が稼働。新たな送電線の敷設。数本の果樹除去。村には新たに精錬所新設の動き。コロナ禍で渡航できず。確認が十分取れていない。 
 


 
 
Pilot Site at Rog, Mastcho, Tajikistan (ログ事業区、マスチョ、タジキスタン)
Rogは Tajikistanを南北に縦断する交通の要衝。Zaravshan河に沿ってUzbekistanに抜ける国道の分岐点でもある。そのAyniから東に130km離れた、Zaravshan河の最上流の村である。最奥の村は河岸段丘を見下ろす丘の上にある。河川の蛇行によって生じた大きな河川敷を対象とする。河岸段丘の崖は氷河が運んだ富栄養の表土が堆積。果樹栽培に適する。河川敷は礫混じりの台地。風も強い。森林公社と土地貸借長期契約を結び、荒れ地に客土し、そこに大規模なジャガイモ畑を開拓。支援によりポプラ等の樹木を提供、防風帯の構築を目指す。長老のHozy氏を中心に、村人のチームワークはタジキスタンでトップクラスの結束の固い部落だ。なお、Hozyという名前は呼称であり、イスラム教徒として最大の名誉であるメッカ詣でを行った信徒に対して尊敬の念を以て、そう呼ぶ。尊敬と信頼の表れである。
Pilot Site at Duoba, Hissar, Tajikistan (デュバ事業区、ヒサール、タジキスタン)
 Duobaは Tajikistanの首都Dushanbeに70kmと最も近いサイトである。
Hissar地区(Khanako川)沿いの部落。
 首都圏からも近いので、プロジェクトかつどうを内外の援助団体にも紹介できる便利さがある。写真上部の小さな谷奥に、泉があり、そこから灌漑システムを構築。植栽にはアプリコットなどの果樹の他マツ類を植栽した。写真中央には天然林のビャクシンの成木があり、天然更新を期待。地表面を掻き起こしを行い、種子の発芽を促す。住民には小規模の畑から得られるジャガイモ、干し草等が収入源。大使、JICA、森林公社、地域政府の関係者を招いて植樹祭を2度開催。
 その後:森林公社推薦のサイトだったが、管理役の住人Murodtは困り果てていた。電気柵を破って、従前牛の放牧をしていた、隣地の主人がクレームを付けた。土地利用の方法については地元民の従前からの生業が強く関わり、土地の政府、監督官庁も形無しである。電気柵の手法による森林と草地の保全は、人間側の合意形成の難しさが直接の原因で、見事失敗してしまった。2019年現地を訪れた際には、うなだれたMurodt氏と現地マネージャーは弁解するでもなく、ただうなだれて私の質問に答えるだけだった。
 
Pilot Site at Kobodion, Khatoron, Tajikistan (コボディオン事業区、ハトロン、タジキスタン)
 
  Kobodionは首都から250km離れている。アフガニスタンとの国境になっている大河ピアンジ河(アムダリア河)に注ぐ支流(Kaufirnigan河とVakhsh河)の合流点は広大な湿原となっている。Kobodion付近の近くは綿花栽培が盛んである。周囲は高塩濃度の水分が浸出しているトレンチが畑の周囲に掘られている。綿花の栽培が可能になるまで、水位を下げる為の知恵である。トレンチに貯まった高濃度の塩水はポンプでくみ上げ、川に排水する。しかし、多くのポンプは故障したまま停止していることが多い。ここでは樹木による蒸散によって、地下水位を下げる試みが期待される。
  綿花畑の周囲には、飛砂によって生じた沙漠の生態系が見られる。中国の新疆ウイグル自治区にあるタクラマカン沙漠と類似している。Haloxiron、Poplus pruinosa, Poplus euphratica 等が分布する。南にアフガニスタン国境を控え、春先にはサンドストーム(砂嵐)が頻発する。耕作地(綿花)を守るため、防風・防砂林の構築が必須である。森林公社に電気柵の管理を委託するが、盗難に遭う。KumargやRogのような住民による相互監視のシステムが必要である。残ったシステムでポプラの植林を再開。実効を高めるため、再度苗木等の植林や必要な道具の供給が必要である。